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大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)1683号 判決

控訴人 日本ゴルフ開発株式会社

右代表者代表取締役 大西博

右訴訟代理人弁護士 井上章夫

同 国井秀策

被控訴人 別所清志

被控訴人 小川裕

被控訴人 柴田有伸

被控訴人 森義光

被控訴人 栗本忠昭

被控訴人 杉村甚吉

被控訴人 志波千恵

右七名訴訟代理人弁護士 好川照一

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、主文同旨の判決を求めた。

二、当事者双方の主張は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおりである(ただし、原判決二枚目裏一一行目の「退会し」の次に「、それぞれ各退会日のころ控訴人に対して右預託金の返還を求め」を挿入する。)から、これを引用する。

(控訴人の主張)

本件倶楽部の会則三〇条によると、「本会則の改正は理事会の決議によるものとする。」とあるところ、同倶楽部理事会は、引用の原判決事実摘示第二の三記載のとおり、昭和五四年一〇月頃右規定に基づいて会則七条の五年間の据置期間を一〇年間に延長する旨の改正決議をしたものであるから、右会則三〇条を承認して本件倶楽部に入会した被控訴人らは、いずれも右改正後の七条の規定に拘束されるものと解すべきである。

(被控訴人らの主張)

右の控訴人の主張は争う。任意団体である本件倶楽部の理事会の一方的決議により控訴人の負担する預託金返還義務を左右することはできない。

三、証拠関係〈省略〉

理由

一、請求原因事実は当事者間に争いがない。

二、そこで、控訴人の抗弁について判断するのに、〈証拠〉によると、本件倶楽部の従前の会則七条には、「入会金は会社が無利息・無配当にて預り、正式開場後五か年間据置き、その後退会等の場合は請求により返還する。但し、天災、地変、その他不可抗力の事態が発生した場合は、理事会の決議により据置期間を延長することができる。」と規定され、同三〇条には、「本会則の改正は理事会の決議によるものとする。」と規定されていたこと、本件ゴルフ場の開場後五年が経過する直前の昭和五四年一〇月頃、本件倶楽部理事会の決議により、右会則七条は、「入会金は会社が無利息・無配当にて預り一〇か年間据置き、その後退会等の場合は請求により返還する。但し、天災、地変、その他クラブの運営上またはゴルフ場の経営上止むを得ないと認められる事情がある場合は、理事会の決議により据置期間を延長することができる。」と改正されたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

控訴人は、右の改正手続は従前の会則三〇条の規定に基づくものであるから、被控訴人らは右改正後の七条の規定に拘束されると主張する。しかしながら、本件のような預託金会員組織のゴルフ場におけるゴルフクラブの会則は、ゴルフ場会社と会員との間の集団的契約関係を規律する普通契約約款の性質を有するものと解すべきところ、本件倶楽部の改正前の会則においては、預託金の据置期間の延長に関して、右の三〇条の一般改正規定とは別に七条但書において前示のような制約をもうけていたのであるから、少なくとも右改正以前に入会していた会員に対する関係では、右据置期間の延長は右但書に該当する場合でなければできないものと解するのが相当であり、したがって、本件倶楽部理事会において会則三〇条に基づき前示のような七条の改正決議がなされたからといって、その効力を右改正前からの会員であった被控訴人らに及ぼすことはできないものというべきである(なお、控訴人は、従前の七条但書に定める改正要件については何ら主張立証しない。)。

したがって、控訴人の右の抗弁主張は採用することができない。

三、そうすると、控訴人に対し、各預託金の返還とこれに対する各弁済期後で本訴状送達の日である昭和五八年三月七日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める被控訴人らの本訴各請求はいずれも正当として認容することができるから、右と同旨の原判決は相当である。

よって、本件控訴は理由がないから、これを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 唐松寛 裁判官 野田殷稔 鳥越健治)

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